2004年12月25日土曜日

「質問力」

中島孝志さんの「巧みな質問ができる人できない人」を読む。

中島さんは「質問力」という言葉を使う。質問力とは「質問と回答の両者を通じて新たな価値を生み出すコミュニケーション」だという。いい質問といい回答が結びつくと、そこに新しい価値が生まれる。新しい価値を生み出す力として「質問力」に注目しているのである。

本書は、質問の回答についても言及している。良い回答というのは、第1に相手の質問に対して全力で応じていること、第2に相手のレベルに立って答えていること、第3に相手が理解しているか確認しながら答えていること、という3点に集約されている。第1、第2はともかく、第3に挙げられた「相手の理解度を確認する作業」は忘れがちである。ついつい質問に答えなければという焦りとともにしゃべり続けてしまうことが多いので、この点は個人的に注意したい。

その後、質問の話は議論の話へと展開する。議論は「私が正しい。あなたは間違っている」という話をするものではない。「私」も「あなた」も気づかなかった「第3の価値」を見つけ出す作業が議論なのだという。「私」も「あなた」もどちらも正解ではない、という点から議論をスタートさせるべきなのだろう。

本書はその他に、質問力をセールストーク、人間関係、人生論、組織のマネジメントへと応用する話が続く。印象に残った点は以下のとおり。

・質問は好奇心の赴くままに投げかけること。それが問題を解決するきっかけになる。

・いいアウトプットを出すためには、その10~100倍のインプットが必要である。インプットのきっかけになるのが質問である。

・人間は質問力によってどこまでも変わる。

・質問は自分の考えを積極的にアピールする絶好の機会である。

・講演会の講師は、鋭い質問をした人のことを忘れないものである。

・講演会で質問を受け付けたとき、3秒の間に手が挙がらなかった場合は退席することにしている。5秒以上待つと「質問のための質問」をする人が現れてしまうためである。

・質問することで相手がその人のことを馬鹿にしたり、軽蔑したり、軽んじたりすることは無い。むしろ質問することで話ができた、聞いてもらえた、喜んでくれたと愛される。

・わからないのにわかったような顔をする人は物事を複雑怪奇にしてしまう。わからなければ質問すればいい。質問は恥ずかしいことではない。質問を省略する態度が失敗を招く。

・質問力の次は回答力、提案力が必要になる。即座に回答や提案ができる準備をしておくことが重要である。

・タフなネゴシエーターは相手に嫌がられるが、その実「強敵だ」という畏敬の念を持って煙たがられているのである。

・セールスは議論ではない。顧客に議論で買っても話にならない。

・仕事は契約と納品だけで成立するものではない。一番重要なのは代金を回収することである。

・会議はいろいろな可能性を秘めたイベント。主宰者のワンマンショーでは意味が無い。

・会議の人数は少なければ少ないほどいい。最低でも10人以下に抑えること。

・情報は自分が体験した1次情報でなければ意味が無い。

・「知っていること」と「理解できること」は違う。「できること」と「実践していること」も違う。

・激しい摩擦を伴う議論の末に、相手との強固な信頼関係が築かれる。

・親鸞と弟子の唯円との会話をまとめた「歎異抄」。その会話は上下関係ではなく並列関係であり、対面関係ではなく同じ方向を向いている関係である。→コラボレーション。

・宮城谷昌光さんの言葉。「歴史上の偉人は多くの苦難を克服している。偉人になりたいと望むことは、天に死ぬほどの苦難をくださいとねだることである。」

・イスラエルのソロモン王の言葉。「賢者は聞き、愚者は語る」

・道元の言葉。「いま、おまえは山を見ているけれども、山もおまえを見ているんだ。」

・GEのCEO、ジャック・ウェルチの言葉。「組織力はエナジャイザー(力を与える人)の存在が左右する。」

・山本五十六の言葉。「やってみせ、いって聞かせて、させてみて、誉めてやらねば、人は動かじ。」→原典は上杉鷹山の言葉。

古本屋で見つけて105円で購入したのが申し訳なく思えるくらい面白い本だった。

山崎

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